遺言書(7日間で見えてくる相続の本質と全体像 4日目)

今日は、【遺言書】について
そもそも遺言書って何かご存知でしょうか?

最近では、TV等でも遺言書の話題が流れ耳にする方も多いので、
ご存知の方も多いかもしれませんね。

一方で【遺言書】対して誤解している人が多く存在しています。
遺言書は、確かに相続対策を行うにあたって非常に有効な手段です。

しかし、その使い方を誤れば、むしろ災いを生み出す基になりかねません。
その為、遺言書は安易に作成してはいけないのです。

誤解が多いものとして、『遺書』というのがあります。
『遺書』とは、残される家族・友人・知人などに個人的な思いを伝えるものであり、
書き方に制限はなく自由に書くことができ、法律的な効力は持たないものになります。

一方『遺言書』とは、書き方に制限があり、法的な効力を持つものです。

法的な効力とは、自分の死後の財産処分に関する意思を実現させるためのものです。

その為、『遺言書』の書き方を間違えると、法的な効力を持たないものとなり、
自分の意志を残すことが出来なくなるのです。

『遺言書』には、自筆証書遺言,公正証書遺言、秘密証書遺言3つの種類があります。
法的効力を持たせた遺言書を間違いなく作るのであれば、『公正証書遺言』を作ることを強くお勧めします。

細かい種類の説明や書き方については割愛しますが、他の遺言書については、
イレギュラーのケース以外使わないと考えても良いかもしれません。

ここまでで、簡単な遺言書のイメージはできましたでしょうか?
前回、『正しく遺言書』を作成しなければ、トラブルの基にもなってしまうと、
お伝えしましたが、残念がらここまでの知識では、正しく遺言書を作ることが出来ません。

たとえ公正証書遺言で、法的な効力を持った遺言書を作成してもです。
遺言書を作れば、相続は安心できるというのも誤解が多いものの一つかも知れません。

法的に効力をもった遺言書であったとしても、その中身が非常に重要になるのです。
そして、問題のない。又は問題を極力少なくするための遺言書を作るには、実は様々な専門的な知識が必要となるのです。

様々な専門的な知識については、また、次回解説していきたいと思いますが、
公正証書遺言を作成しても揉めてしまったケースとして、具体的な例を一つ紹介していきたいと思います。

事例①

母が数年前に他界、父の遺産を巡って2人の兄弟が相続人
父は、生前時、兄夫婦が同居して父の面倒(介護)をみてきました。

遺産は、主に同居している自宅と、わずかな現金のみでした。
父と弟夫婦は、折り合いが悪かったことと、財産も自宅とわずかな現金のみということもあり、
自分がなくなっても住まいに困らぬよう【公正証書遺言】にて遺産は全て長男へ譲ることにしました。

この遺言書は、公正証書遺言に則り書いたものなので、もちろん有効なものです。
しかし、それでもトラブルが起こる可能性があるのです。

その理由の一つが【遺留分】です。

【遺留分】とは、民法で定められている一定の相続人が最低限相続できる財産のことをいいます。
わかりにくいので、前回のメール講座で紹介した【法定相続人】【法定相続分】と一緒に見て行きたいと思います。

第1順位
配偶者 (★遺留分)          子    (★遺留分)
2分の1(★4分の1)   2分の1 (★4分の1)
第2順位
配偶者  (★遺留分)  ※直系尊属 (★遺留分)
3分の2 (★6分の2)  3分の1 (★6分の1)
※兄弟には遺留分はありません。

もっと色々なパターンがあるのですが、基本的には上記の相続人が存在している場合は、
法定相続分に更に2分の1したのが遺留分ということになります。

資産が400万円の現金、相続人は配偶者と2人の子供の場合、

法定相続分は、配偶者200万円(1/2)、子供1人につき100万円(1/4)
遺留分は、配偶者は、100万円(1/4)、子供1人の遺留分は、50万円(1/8)

先ほどの、例では2人の子供が相続人で、公正証書遺言にて全ての財産を長男へというものでしたので、
法定相続分は、兄弟で半分ずつの200万円になりますが、遺言書によりすべての財産は長男となっていました。

しかし、弟には【遺留分】という民法で定められている一定の相続人が最低限相続できる
権利がある為、この場合は、弟は、資産の4分の1についての権利を持つことになります。

但し、【遺留分】とは、弟が『遺留分減殺請求』の行使をして初めて有効になるものです。
その為、もし行使しなければ、その遺言書は有効に使うことが出来るのです。

今回の場合、もし、弟が遺留分を請求した場合、どのようになるのでしょうか。
想定している財産は、主に住まい(不動産)となります。

その為、現金のように分け合うことが出来ません。
方法としては、①不動産を売却して現金化する。
または、②不動産を持分の割合で共有名義にするか。
③資産の持分を現金で換算してその分を現金で渡す。

基本的にはこの3つになると思います。

①長男としては、思い入れのある家であり自分の住まいでもある家を売却は考えられない。
②不動産の共有名義は、相続でもっともやってはいけないことの一つとして言われています。
理由は、次回詳しくご説明します。
③この場合、不動産の価値を明確にしなければ、いくらを渡さなければ良いかわかりません。
現金を渡したくない兄は不動産価値を低く考えるでしょうし、現金が欲しい弟は不動産価値を
高く考えるでしょう。

このように、例え公正証書遺言を作成したとしても、『遺留分』などをめぐって
十分トラブルになる可能性があるのです。

そして、今回の事例に出てきましたが、実際に相続資産のほとんどを占めることが多い『不動産』
この『不動産』は、相続を行うにあたって大きなトラブルを引き起こす『種』になりやすい特徴を持っています。

その為、相続を考える上で『不動産』に関する知識は非常に重要です。
但し、『不動産』についての知識は、案にトラブルを回避するためだけではありません。
対策をすることで、大きな節税の効果をうんだり、収入をアップさせることも出来るようになります。

今回は、『遺言書』と『遺留分』について解説しました。
次回は、相続を理解するうえで重要なポイントになりうる『不動産』について解説していきます。

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